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【ますかる – 複素解析編 – 第3節 – (1)】なんとなくでコーシーの積分公式を導く


$ \dis\frac{ze^z}{(z-1)^3} $ の線積分へ再挑戦

サイン 「コーシーの定理を知ったいまなら…
\begin{eqnarray}
\frac{ze^z}{(z-1)^3}
\end{eqnarray}
の積分ができそうな気がするぞ!」
※参考【複素関数の経路による線積分の値の違いが微分係数になるのを確かめたい】

コサイン 「そもそもなんでその積分計算したかったんだっけ?」

サイン 「ほら, $ f(z) $ の導関数と線積分の関係をみたかったんだよ.」

コサイン 「そうだったそうだった.」

サイン 「そんときは,2つの経路としてこんなのを取ってたね.」

サイン 「そんでもって,この2つの経路の積分と導関数の関係
\begin{eqnarray}
\int\thr\gamma\f 1\frac{ze^z}{(z-1)\ef 3}dz-\int\thr\gamma\f 2\frac{ze^z}{(z-1)\ef 3}=\frac{2\pi i}{2!}\times (ze^z)”\bigg|\thr z=1
\end{eqnarray}
を確認したかったんだ.」

コサイン 「それってつまり周回積分の言葉で表すと,これを確かめたかったってことになるかな.」

サイン 「そうそう.そういうことになるね.」

コサイン 「もう一回この経路で計算してみる?」

サイン 「もう一度やってみるかー.やっぱりできなかったらコーシーの定理の出陣だ.」

コサイン 「それじゃ,えーと…まぁ,前と同じようにして経路を4分割して計算すればいいか.」

サイン 「最後に積分をまとめやすいように,パラメーターの範囲は全部 $ -1\leq t\leq 1 $ にしてと…」

サイン 「で…計算,計算.」

コサイン 「……….」

サイン 「……….」

コサイン 「いろいろ計算してみたけど,やっぱ無理そうだね.」

サイン 「うーん…理論的には計算できるはずなのに…….ちょっと悔しいけどコーシーの定理を出陣させよう.」

サイン 「これを使えば,経路はいろんな形に変形できるぞ!」

コサイン 「やっぱり変形するとしたら円周かな?」

サイン 「そうだろうねー.まぁ正直,正方形の経路じゃなくても $ z=1 $ を一周する経路なら,なんでも円周にできるわけでしょ.」

コサイン 「多分そうっぽいね.」

サイン 「それじゃ,こういう経路で計算しちゃおう.」

コサイン 「そういう極端な例が好きだよね…サインは」

サイン 「やりがいがあるじゃないか.」

コサイン 「まぁ,コーシーの定理を使ってすぐに円周になっちゃうわけだけどね.」

(※具体的な話はこちらを参照【周回積分とコーシーの定理】)

コサイン 「これで円周の完成っと」

サイン 「無常なり…」

コサイン 「何がさ」

サイン 「あんなメチャクチャな経路もすぐに円周にできちゃうもんだね.」

コサイン 「コーシーの定理は強いねぇ」

サイン 「なんか,円板を取ってそこで変形して,また円板を取って,っていう作業を繰り返さなくても,『正則領域内で閉曲線は自由に変形できます』っていっちゃった方が早いよね.」

コサイン 「まぁ,たしかに正則領域内ならどんな場所でも円板は持ってこれるんだから,閉曲線は正則領域内で変形し放題だね.」

サイン 「じゃぁ,もうこんな感じで,一気に円周に変形させちゃえばいいんじゃないかな.」

コサイン 「この方がわかりやすいね.」

サイン 「これがいわゆる連続変形ってやつか…」

コサイン 「この連続変形は正則領域内で常に可能ってことになるよね.」

サイン 「領域がどんな形しててもそうなりそうだね.」

サイン 「よし,それじゃぁ
\begin{eqnarray}
\frac{ze^z}{(z-1)^3}
\end{eqnarray}
を円周上で積分すれば,一周する経路はすべて攻略したことになるなー.やってみよー.」

サイン 「この円周のパラメータ表示は,実軸に $ +1 $ だけずれたような単位円だから, $ C(t)=e^{it}+1 $ とでもしておけば…」
\begin{eqnarray}
\oint\f C\frac{ze^z}{(z-1)\ef 3}dz&=&\int\f 0\etwo 2\pi \frac{(e^{it}+1)e^{e^{it}+1}}{(e^{it})^3}(ie^{it})dt\
&=&\cdots\cdots\cdots
\end{eqnarray}
サイン 「しまった…そう言えばこのままの形じゃとても計算できないんだった.このあとどうするんだっけ?」

コサイン 「たしか, $ \exp(\exp z)/z^2 $ のときは『発散部』を引き算して $ z=0 $ も含めて複素平面全体で正則になるような関数を作ってた.こんなふうに」
\begin{eqnarray}
\tilde g(z)=\begin{cases}
\dis\frac{\exp(\exp z)}{z^2}-\paren{\frac{e}{z^2}+\frac{e}{z}} & (z\neq 0)\\
e & (z=0)
\end{cases}
\end{eqnarray}
コサイン 「複素平面全体で正則なら,コーシーの定理で
\begin{eqnarray}
\oint\f C\braces{\frac{\exp(\exp z)}{z^2}-\paren{\frac{e}{z^2}+\frac{e}{z}}}=0
\end{eqnarray}
になるから,
\begin{eqnarray}
\oint\f C\frac{\exp(\exp z)}{z^2}dz=\oint\f C\paren{\frac{e}{z^2}+\frac ez}dz
\end{eqnarray}
になって,より簡単な関数の積分で済むようになるってわけだね.」

サイン 「おぉ…よく流れを覚えてるねぇ…さすがだよ」

コサイン 「ちゃんとノートにメモしてあるから…」

サイン 「私のノート殴り書き過ぎて読めない…」

コサイン 「自分で読めん字を書くんじゃない…」

サイン 「ヒートアップしちゃったらしい」

サイン 「それじゃ, $ ze^z/(z-1)^3 $ でも同じことをすればいいわけだね!」

コサイン 「そうだね.」

サイン 「えーと…てことは…こんどは $ ze^z/(z-1)^3 $ の分子を $ z=1 $ でテイラー展開すればいいのかな.」

コサイン 「この前半が発散部で後半が正則な部分だね.」

サイン 「ということは,この $ \tilde f(z) $ はこんなふうに書けるね.」

コサイン 「これで計算できそうだ.」

サイン 「やってみよう. $ \tilde f(z) $ は全複素平面で正則だから,円周 $ C $ にもコーシーの定理が使えるようになって…」
\begin{eqnarray}
\oint\f C\tilde f(z)dz=0
\end{eqnarray}
コサイン 「これを書き直していけば…」

 

サイン 「この右辺…計算できるかなぁ…パラメーター表示してみよう…」

サイン 「おお!でたぞ!答えは $ 3e\pi i $ だ.」

コサイン 「これはたしかに
\begin{eqnarray}
\frac{2\pi i}{2!}\times (ze^z)”\big|\thr z=1=\pi i\times (2+1)e^1=3e\pi i
\end{eqnarray}
と一致しているね.」

サイン 「これでコーシーの積分公式
\begin{eqnarray}
\frac{2\pi i}{n!}f\pne n(\alpha )=\oint\f\gamma \frac{f(z)}{(z-\alpha )\ethr n+1}dz
\end{eqnarray}
の具体例を確認できたぞ!」

コサイン 「…….」

サイン 「どうしたの?コッシー?」

コサイン 「これってさ…, $ f(z) $ のテイラー展開さえ計算できれば,一般的に確認できないかな?」

サイン 「テイラー展開……そういえば…」

コサイン 「私たちがやってる計算で,本質的なのってテイラー展開して正則な部分を求めるところだよね.」

サイン 「経路の変形自体はコーシーの定理で,具体的な計算はテイラー展開して,って感じだね.」

コサイン 「実関数と同じように複素関数でも
\begin{eqnarray}
f(z)=\sum\thr n=0^\infty\frac{f\pne n(\alpha)}{n!}(z-\alpha)\ef n
\end{eqnarray}
ていうテイラー展開ができれば…」

サイン 「なんかそう考えると,できる気がしてくる.あと,周回積分が導関数と関係しそうなのも何となく分かるなぁ.」

コサイン 「ちょっと確かめてみたいね.」

サイン 「少し休憩しよー.ケーキくおうぜ.」

コサイン 「うん.」


コーシーの積分公式をなんとなく導く

サイン 「一般の $ f(z) $ に対しても
\begin{eqnarray}
\frac{2\pi i}{n!}f\pne n(\alpha)=\oint\f\gamma\frac{f(z)}{(z-\alpha)\ethr n+1}dz
\end{eqnarray}
を示せるんじゃないかという話だったが…」

コサイン 「 $ \gamma $ は $ z=\alpha $ を一周する閉曲線ね.」

サイン 「コーシーの定理を使っちゃえば
\begin{eqnarray}
\frac{f(z)}{(z-\alpha)\ethr n+1}
\end{eqnarray}
が正則な領域は $ \com\setminus\jb\alpha $ だから,結局は $ z=\alpha $ を一周する単位円上の積分さえ分かっちゃえばいいことになるね.」

コサイン 「そういうことだね.」

サイン 「この $ f(z) $ を $ z=\alpha $ でテイラー展開すればいいんだな.」

コサイン 「やってみようか」

サイン 「うーむ…そもそもこういうテイラー展開は複素関数でも可能なのか?」

コサイン 「少なくとも $ \exp(\exp z)/z\ef 2 $ と $ ze^z/(z-1)\ef 3 $ のときはできたけど……実関数のときみたいにできるんじゃないかな?」

サイン 「 $ n $ 階導関数があるわけだから,少なくとも $ f(z) $ は $ z=\alpha $ で $ \infty $ 階微分可能じゃないといけないよね.」

コサイン 「そりゃそうか…正則ってだけじゃ1階微分でしかないからね….でも,ちょっとまって…たしか実関数のときってさ, $ \infty $ 階微分可能でもテイラー展開できない例ってあったよね.」

サイン 「ぬおぉ…そーいえばあったなぁ…」

サイン 「ってことは, $ f(z) $ がテイラー展開できるためには…少なくとも $ f(z) $ が $ z=\alpha $ で $ \infty $ 階微分可能でかつテイラー展開可能でなきゃいけないか.」

コサイン 「そういうことになるね….ちょっと仮定が長いけどいまはしょうがないか.」

サイン 「それじゃ… $ f(z) $ は $ z=\alpha $ でテイラー展開可能だとして,
\begin{eqnarray}
\oint\f C\frac{f(z)}{(z-\alpha)\ethr n+1}dz
\end{eqnarray}
を計算してみよう.」

コサイン 「じゃ,さっそく $ f(z) $ のテイラー式を使うと…」

サイン 「発散部分と正則部分はここだね.」

コサイン 「思ったけど,この式の両辺をいきなり積分しちゃえばスマートに行くんじゃないかな?」

サイン 「うーむ.なるほど…後半の正則な部分はコーシーの定理を使えば $ 0 $ になるってわけだね.」

コサイン 「あとはパラメーター表示だね.」

サイン 「円周は $ C(t)=e^{it}+\alpha\ (0\leq t\leq 2\pi ) $ って表示できるから… $ z=e^{it}+\alpha $ としちゃえば…」

サイン 「よーし.できてきたぞ.」

コサイン 「 $ 1/(e^{it})\ef n $ の部分は
\begin{eqnarray}
\oint\f C\frac{1}{(e^{it})\ef n}dt&=&
\oint\f Ce^{-nit}dt\\
&=&\left[ -\frac{1}{ni}e^{-nit} \right]\f 0\etwo 2\pi \\
&=&0
\end{eqnarray}
ってできるから…後半の積分は大体 $ 0 $ になっちゃうね.」

サイン 「ってことは…」

サイン 「うおー!出てきたぞ!」

コサイン 「これで,こういうことがわかったね.」

次回:本家コーシーの積分公式

『テイラー展開できるってどういうこと?』

『級数の正則な部分は本当に正則?』

『本家コーシーの積分公式とは?』

『 $ z=\alpha $ を一周するってどういうこと?一周の定義とは?』

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