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【ますかる – 複素解析編 – 第1節】 複素関数の微分

ネイピー 「関数の話をする上で重要になるのは,その関数の微分可能性ですが,複素関数の場合もその例にもれません.」

コサイン 「実関数 $ f:\rea\to\rea $ のときは,微分が可能であることを

という感じで定義しましたが,複素関数の場合も同じですか?」

ネイピー 「まったく同じです.変数が複素数に変わるというだけです.あと呼び名も『微分可能関数』ではなく『正則関数』になります.」

コサイン 「この極限 $ \dis\lim\thr z\to\alpha $ は複素数の極限ってことですよね.この意味は実数のときと変わらないんでしょうか.」

ネイピー 「極限の意味も基本的には変わりません.複素関数 $ f(z) $ に対して
\begin{eqnarray}
\lim\thr z\to\alpha f(z)=\beta
\end{eqnarray}
の意味は $ z $ が $ \alpha $ に近ければ, $ f(z) $ は $ \beta $ に近いという意味になります.」


ネイピー 「複素関数の場合, $ \dis\lim\thr z\to\alpha f(z)=\beta $ なら,その実部の極限と虚部の極限はどちらも一致しています.」


ネイピー 「このことを $ f(z) $ が正則であるという条件式

に適用して, $ f $ が正則であるために必要な条件を導いてみましょう.」

コサイン 「えーと…この極限が存在するということは,実部と虚部の極限が一致しているということだから…


ということになりますね.」

ネイピー 「そのとおりです.その式を変形していくと,

という式が得られます.これはコーシー・リーマンの関係式と呼ばれています.長いのでCR関係式とでもいいましょう. $ f $ が正則であれば少なくともこれが成り立つわけです.」

コサイン 「具体的に実部で微分とか,虚部で微分というのはどのようにするのですか? 例えば $ f(z)=z^2 $ とかだと…」

ネイピー 「その例で少し計算してみましょう.まず $ f(z) $ を実部虚部に分けて書くと
\begin{eqnarray}
f(x+iy)&=&(x+iy)^2\\
&=&(x^2-y^2)+2ixy
\end{eqnarray}
になります.これをそれぞれ $ x $ と $ y $ で微分するといいんです.」

コサイン 「そこまで難しい計算では無いんですね.これを見ると…
\begin{eqnarray}
\bibunp fx=-i\bibunp fy
\end{eqnarray}
がちゃんと成り立っていますね.だから $ f(z)=z^2 $ が正則になることが分かるという算段ですね.」

サイン 「でも,さっきの論法だと, $ f $ が正則なときに $ \partial f/\partial x=-i\partial f/\partial y $ が成り立つというだけで,この式が成り立つからといって $ f $ が正則とは限らないんじゃ…」

ネイピー 「いいところに気がついています.確かにCR関係式が成立すれば $ f $ が正則になるということは証明していません.ですが,実はこれもちゃんと成り立っています.つまり $ f $ が正則であることと,CR関係式が成り立つことは
等価なことになっています.」

ネイピー 「だからこそ,CR関係式が重要なものになっているんです.」

サイン 「おぉ…それはありがたい…ということは $ f(z) $ が複素微分可能かどうか調べるには, $ f(x+iy) $ の $ x $ での微分と $ y $ での微分を考えるだけでいいわけか…」

コサイン 「今の例でいうと, $ f(z)=z^2 $ はCR関係式を満たしているから正則なわけですね.…具体的に $ df/dz $ はどうやって計算するんですっけ?」

ネイピー 「定義に戻って考えてみましょう. $ df/dz(\alpha ) $ は
\begin{eqnarray}
\frac{df}{dz}(\alpha )=\lim\thr z\to\alpha\frac{f(z)-f(\alpha)}{z-\alpha}
\end{eqnarray}
でした.そして $ f $ が正則であるということは,定義域の任意の点 $ z=\alpha $ で右辺の極限が存在して,実軸,もしくは虚軸に沿った極限と一致しているということですから

が成り立っています.つまり, $ f $ が正則なら自動的に
\begin{eqnarray}
\frac{df}{dz}=\bibunp fx
\end{eqnarray}
が成立しています.」

コサイン 「そういうことか…CR関係式を確かめるときに $ \partial f/\partial x $ は計算してしまうから,導関数も一緒に計算できてしまっているんですね.」

サイン 「えーと $ f(z)=z^2 $ は,CR関係式を満たしているから正則で,
\begin{eqnarray}
\bibun fz=\bibunp fx=2x+2iy=2z
\end{eqnarray}
になるというわけかぁ.」

コサイン 「複素関数の導関数も,実関数のときと一緒の結果がでてくるんですね.」

ネイピー 「そんな感じでOKです.もう少し例を挙げてみましょうか.」

コサイン 「そうですね.例えば… $ f(x+iy)=x^3+iy^2 $ とかは…」
\begin{eqnarray}
\bibunp fx&=&3x^2\\
\\
-i\bibunp fy&=&-i\cdot (2iy)=2y
\end{eqnarray}
サイン 「これはCR関係式が成り立ってないから, $ f $ は正則じゃないな….それじゃ $ g(z)=\overline z^2 $ はどうだろう」

コサイン 「 $ g(x+iy)=\overline{(x+iy)^2}=(x^2-y^2)-2ixy $ だから…
\begin{eqnarray}
\bibunp gx&=&2x-2iy=2\overline z\\
\\
-i\bibunp gy&=&-i\cdot (-2y-2ix)=-2\overline z
\end{eqnarray}
これも成り立ってないな…」

サイン 「意外とCR関係式ってきつい条件っぽいなぁ.これだったらどうかな?
\begin{eqnarray}
f(z)=\exp z
\end{eqnarray}
コサイン 「それは計算するまでもなく,正則じゃない?」

サイン 「なんで?」

コサイン 「たしか複素関数における $ \exp z $ の定義って, $ f'(z)=f(z),\; f(0)=1 $ を満たすような正則関数の解だよね? だとしたらその時点で $ \exp z $ は正則で,
\begin{eqnarray}
\frac{d}{dz}\exp z=\exp z
\end{eqnarray}
じゃないかな?」

サイン 「確かにそうだね…」

ネイピー 「純粋な複素関数論的な $ \exp z $ の定義に従うと,そうなりますね.ですが,いまは $ \exp z $ の定義はオイラーの公式によるものとしましょう.つまり
\begin{eqnarray}
f(z)=\exp z=\exp (x+iy)=e^x(\cos y+i\sin y)
\end{eqnarray}
を定義として,本当にこれが正則になるかどうか検証してみましょう.」

コサイン 「オーケーです.やってみます. $ \exp (x+iy)=e^x\cos y+ie^x\sin y $ だから,実部と虚部を $ x,y $ で微分すると…

になりますね.」

サイン 「ってことは, $ \exp z $ はちゃんと正則関数になってる.そしてちゃんと
\begin{eqnarray}
\bibun{\exp z}{z}=\bibunp{\exp(x+iy)}{x}=\exp z
\end{eqnarray}
になってるな.」

コサイン 「これも実指数関数と一緒だ.」

サイン 「ここまでの例を並べると…」

サイン 「こんな感じだね.」

コサイン 「でも,少し不思議だな…」

サイン 「不思議…?」

コサイン 「だって, $ f(x+iy)=x^3+iy^2 $ とかって,実部と虚部 $ x,y $ に対してどう考えても微分可能だよ.」

サイン 「そうだねぇ.だからこそ $ \partial f/\partial x $ と $ \partial f/\partial y $ が計算できるわけだからね.」

コサイン 「それなのに,複素微分は不可能なんだ…それがちょっと不思議でさ.」

サイン 「まぁ…確かに言われてみれば…複素変数に対して『滑らかに変動』しているのになぜ微分できないんだろう.」

ネイピー 「確かにそこは不思議に感じるところかもしれません.複素数というものの幾何的想像のしにくさというものがありますね.そこで,もう少し複素関数の正則性というものを別な視点で眺めてみることにしましょう.」

ネイピー 「まず,数式そのものを吟味することで,正則性の意味を考えてみましょう.」

サイン 「よーし!」

ネイピー 「複素関数 $ f(z) $ というものは,複素変数 $ z $ の動きに対応するものです.ここで $ z $ という変数は実部と虚部という2つの実数 $ x,y $ によって
\begin{eqnarray}
z=x+iy
\end{eqnarray}
と記述できることは知ってのとおりです.」

サイン 「抜かりはないです.」

ネイピー 「つまり
\begin{eqnarray}
f(z)=f(x+iy)
\end{eqnarray}
という複素関数は,2つの実数 $ x,y $ の動きに対応するようなものと考えることができます. つまり『実2変数関数 $ f:\rea\ef 2\to\com $ 』と考えることができますね.」

コサイン 「そうですね…2つの実数の組 $ (x,y)\in\rea\ef 2 $ を与えると,何かしらの複素数値を返す関数だと思っても差し支えないと思います.」

サイン 「 $ f(x+iy)=(x^2-y^2)+i(2xy) $ は, $ f(x,y)=(x^2-y^2)+i(2xy) $ って記述するのと同じことですね.」

ネイピー 「そういうことです.さて, $ f $ は2つの実数を与えると1つの複素数を返す関数で,その値も実部と虚部に分けることができます.それをこう記述しましょう.」

サイン 「関数の方に現れてる $ f\re(x,y),f\im(x,y) $ っていうのは…2つの実数 $ x,y $ を与えると,それぞれ実数を返す関数と見ることができますね.」

ネイピー 「そうです.いままで虚数 $ i $ を含んだ微分を素朴に計算していましたが,この見かたで微分計算を行うのが本来的です.関数の実部での微分
\begin{eqnarray}
\bibunp fx
\end{eqnarray}
なども,実部と虚部に分けてから行うものでしたね.」
\begin{eqnarray}
\bibunp fx=\bibunp{f\re(x,y)}{x}+i\bibunp{f\im(x,y)}{x}
\end{eqnarray}
コサイン 「はい.そこは暗黙的にそういう計算をしていました.」

ネイピー 「いま,複素関数は2つの実数の動きにより記述できることがわかりましたから, $ (x,y) $ を基準の変数として複素関数の微分などを再度考えてみることにしましょう.」

サイン 「複素変数として考えるのと,2つの実変数として考えるのって, $ z=x+iy $ という関係があるから同じことのように思えるのですが…」

ネイピー 「そのことも含めて,2つの視点の違いというものを考えてみます.」

ネイピー 「まずは $ \dis\bibun fz $ の意味です.」

サイン 「複素微分の記号ですね.」

ネイピー 「実はこの複素微分,少し注意しないと泥沼にハマってしまう点があります.」

コサイン 「そうなのですか…」

ネイピー 「まず $ \dis\bibun fz $ の定義を再度書いてみましょう. $ \dis\bibun fz $ というのは 複素極限によって
\begin{eqnarray}
\bibun fz=\lim\thr s\to z\frac{f(s)-f(z)}{s-z}
\end{eqnarray}
と定義されるものです.このような極限がすべての $ z $ で存在するときに
$ f $ は正則といいましたね.」

コサイン 「少し極限に使っている文字が変わっていますが,そういうことで理解しています.」

サイン 「実軸と虚軸に沿った微分のそれぞれが一致するっていうことから,
\begin{eqnarray}
\bibunp fx=-i\bibunp fy
\end{eqnarray}
っていうCR関係式がが成り立っていましたね.」

ネイピー 「そうです.そして逆にCR関係式が成り立っていれば $ f $ は正則関数になってくれました. $ \dis\bibun fz $ というのは $ f $ が正則なときにしか定義することができないということに注意してください.では正則であることを意味するCR関係式
\begin{eqnarray}
\bibunp fx=-i\bibunp fy\
\end{eqnarray}
を, $ f $ を実2変数の関数だと考えて,実部と虚部に分けて考えてみましょう.」

コサイン 「えっと, $ f(x,y)=f\re(x,y)+if\im(x,y) $ なんだから
\begin{eqnarray}
\bibunp fx&=&\bibunp{f\re(x,y)}{x}+i\bibunp{f\im(x,y)}{x}\\
\\
-i\bibunp fy&=&\bibunp{f\im(x,y)}{y}-i\bibunp{f\re(x,y)}{y}
\end{eqnarray}
になって,実部と虚部を比較すればCR関係式は
\begin{eqnarray}
\bibunp{f\re(x,y)}{x}&=&\bibunp{f\im(x,y)}{y}\\
\\
\bibunp{f\im(x,y)}{x}&=&-\bibunp{f\re(x,y)}{y}
\end{eqnarray}
になりますね.」

ネイピー 「オッケーです.最後に得られたCR関係式に複素数の情報は全く出ておらず,すべて実関数だけで記述されています.そして…ここから少し分かりづらい話に入っていきます.」

ネイピー 「複素関数 $ f $ は,2つの実変数 $ x,y $ を基準にして考えると,もう1つ別な見かたが生じます.いま $ z=x+iy,\; \overline z=x-iy $ とすると
\begin{eqnarray}
f(x,y)=f\paren{\frac{z+\overline z}{2},\; \frac{z-\overline z}{2i}}
\end{eqnarray}
ですから, $ f $ は『 $ z $ と $ \overline z $ の2変数関数』としてみることもできます.」

サイン 「……? ちょっと待ってください. $ f $ って『 $ z $ と $ \overline z $ の2変数関数』ですか? だって $ \overline z $ は $ z $ で書けてしまっていますし, $ z $ の1変数関数では…?」

ネイピー 「 $ \overline z $ という記号がくせものですね.少し実2変数の例を挙げてみます.例えば $ F(x,y) $ という関数があったとき, $ u=x+ky,v=x-ky $ として,
\begin{eqnarray}
F(x,y)=F\paren{\frac{u+v}{2},\;\frac{u-v}{2k}}
\end{eqnarray}
のように $ u,v $ の2変数関数として見るということができます.このとき,この $ F $ は $ u $ の1変数関数にすることはできませんね.」

コサイン 「うーん…それは無理そうですね. $ u $ と $ v $ の間に『関係がない』ですし…」

サイン 「関係ないかな?だってどっちも $ x,y $ とともに動いてるわけだし…」

コサイン 「でも,
\begin{eqnarray}
u=なんとかv
\end{eqnarray}
みたいな形には書けないでしょ?」

サイン 「 $ u=v-2x $ とは書けそうだけど….でも,もともとの変数である $ x $ が入ってたら,純粋に $ u,v $ の間の関係とは言えないか…」

コサイン 「ちょっと…混乱しそうだね.でも $ u,v $ の間に純粋な関係がないから, $ u $ と $ v $ は独立な変数として見れるってことじゃないかな.」

ネイピー 「ちょうどそんな感じですね.複素数 $ z,\overline z $ の間にも『複素的に』純粋な関係式がないんです.」

サイン 「そこがちょっとわからないところですね…さっきの $ u,v $ と違って $ z $ と $ \overline z $ との間には『共役』という関係があるきがするんですが…」

コサイン 「でも… $ \overline z $ を $ z $ だけで記述できるかというと…」

サイン 「それは…無理か…? $ \overline z=z-2iy $ とは書けるけど…もともとの基準の変数である $ y $ が入ってしまっている….」

コサイン 「ということは…なんて言えばいいんだろう. $ z $ と $ \overline z $ は独立な変数ってことに…」

サイン 「 $ z $ と $ \overline z $ は,実軸に対して対称な位置を動いているのに…独立な変数…」

ネイピー 「幾何的に考えると,分かりづらいですね.ざっくり言うと $ z $ と $ \overline z $ との間には純粋な複素的関係がありません. $ z $ と $ \overline z $ の関係を書こうと思ったら,必ず『実部と虚部に分けて考える』必要性が生じてしまうからです.」

サイン 「つまり… $ z $ と $ \overline z $ は複素的に独立だから,
\begin{eqnarray}
f(x,y)=f\re(x,y)+if\im (x,y)
\end{eqnarray}
という複素関数は, $ z $ と $ \overline z $ の2変数関数として見ることもできるということですか…ちょっと例を挙げてみると…
\begin{eqnarray}
f(x,y)=x^2+iy^2
\end{eqnarray}
っていう関数は…

みたいな $ z $ と $ \overline z $ の2変数関数だとも考えられるってことですね.」

コサイン 「でも
\begin{eqnarray}
f(z)=z+\overline z
\end{eqnarray}
みたいに複素関数を書くことがありますよね.この関数は本来 $ z $ だけの関数じゃないってことになりますか?」

ネイピー 「複素数を1つの数だと捉えたときに, $ \overline z $ という数は $ z $ からみて関係のない数になっています.さらに $ z $ の実部と虚部 $ x,y $ も $ z $ から見ると複素的関係のない数です.実数的関係はありますけどね.つまり,
\begin{eqnarray}
f(z)=z+\overline z
\end{eqnarray}
は実数的な関数
\begin{eqnarray}
f(x,y)=2x
\end{eqnarray}
として見るべきものであり,複素的な関数として見るには不純な要素が入っていると言えます. $ f(z)=z+\overline z $ は,『共役を取る』という複素的に不純な操作を許すことで,見かけ上複素1変数として書くことができているというだけなんです.」

コサイン 「なんとなくは分かってきたような気がしますが,『複素的に純粋』という言葉がまだあいまいな気がしますね.なんとか数学的に定義できないでしょうか.例えば
\begin{eqnarray}
f(z)=z+(\overline z)^2
\end{eqnarray}
みたいな関数はパット見で複素的に不純な関数で,本来は $ x,y $ ,もしくは $ z,\overline z $ の2変数関数として見るべきものというのはわかります.対して
\begin{eqnarray}
f(z)=z^3+e^z
\end{eqnarray}
のような関数は複素的に純粋な関数で,複素1変数関数 $ z $ として見ることができる,というのはなんとなくわかります.でも数式が複雑になったら,この『パット見で判別する』ということができなくなりますよね?」

ネイピー 「複素的に純粋な関数ということの定義が必要になりますね.実は $ f $ が複素的に純粋であるというのは,CR関係式を満たすこと,つまり複素関数が正則であることを表す関係式
\begin{eqnarray}
\bibunp{f(x,y)}{x}=-i\bibunp{f(x,y)}{y}
\end{eqnarray}
を満たすことと考えることができます.」

サイン 「なんと…?」

ネイピー 「さきほど言ったように実2変数の複素数値関数 $ f(x,y) $ は $ z,\overline z $ の2変数関数として見ることもできます.つまり $ f(x,y) $ は $ z $ と $ \overline z $ で微分することが可能です.」

サイン 「おお…でもそれはどのように…?」

ネイピー 「実2変数の実数値関数 $ f(x,y) $ の場合, $ x=\varphi(u,v),y=\psi(u,v) $ という関係があったら, $ f $ の $ u $ と $ v $ の微分は

と計算することができます.これは2変数版の合成関数の微分法ですが,これを複素数値関数 $ f(x,y) $ と, $ x=(z+\overline z)/2,\; y=(z+\overline z)/2i $ に適用し,実部と虚部で実解析的な操作ができるとすると,

と計算できます.というよりこれを $z$ と $\overline z$ での偏微分と定義するということも出来ますね.」

コサイン 「 $ f $ が正則ってことは,CR関係式
\begin{eqnarray}
\bibunp{f(x,y)}x=-i\bibunp{f(x,y)}y
\end{eqnarray}
を満たしているということだから…

になりました.」

ネイピー 「オッケーです.これを見ると $ f $ が正則関数なら
\begin{eqnarray}
\bibunp{f(x,y)}{\overline z}=0
\end{eqnarray}
になっていますね.これは $ f $ が $ \overline z $ という変数には関与していないということを意味しています.さきほどの『複素的に純粋な関数』という意味に近いものになっていますね.」

サイン 「確かに…そうか正則関数は『 $ \overline z $ に関与しない関数』ということもできるんだ.」

ネイピー 「実際,正則関数の定義を
\begin{eqnarray}
\bibunp f{\overline z}=0
\end{eqnarray}
とする方法もあります.そして $ f $ が正則なら $ df/dz $ も意味を持ちます.そして
\begin{eqnarray}
\bibunp fz=\bibunp fx=\bibun fz
\end{eqnarray}
も同時に成り立っていますね.」

サイン 「そうか…なんとなくだけどいろいろ分かってきたぞ…. $ f(z)=z+\overline z^2 $ とかは複素的に純粋な1変数関数じゃない.だから $ df/dz $ が定義できなくても無理はないんだ.だけど $ z $ と $ \overline z $ の2変数関数として見ることは可能で,これらの『偏微分』 $ \partial f/\partial z $ と $ \partial f/\partial\overline z $ は計算できると….そして $ f $ が正則であるということは, $ f(z) $ が純粋な複素1変数関数だってことを言っているから
\begin{eqnarray}
\bibunp{f}{\overline z}=0
\end{eqnarray}
で,
\begin{eqnarray}
\bibunp{f}{z}=\bibun fz
\end{eqnarray}
が成り立っているんだ….」

コサイン 「なるほど… $ f $ が正則関数とは限らない場合は
\begin{eqnarray}
\bibunp fz\ と\ \bibun fz
\end{eqnarray}
は違う意味を持っているんですね.」

サイン 「こうなると, $ \overline z $ が少し可哀想な存在になっていますね….純粋な複素関数には登場させられないなんて….」

ネイピー 「そう言ってしまうとそうですねぇ.『純粋』という言葉は最終的に正則という意味だとわかりましたが,もちろん正則関数だけが複素関数だけじゃありませんから,変数 $ z $ は正則な部分, $ \overline z $ は非正則な部分としての意味を持っています.正則関数だけを扱っている限りは $ \overline z $ は登場できませんが,複素幾何ではこの非正則部分も活躍するんですよ.」

サイン 「ほぉ~~.」

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